俺にはラーメン好きの先輩がいる。
それも結構なラーメン好きだ。
仕事で外に出れば必ず食事はラーメン。
仕事帰りにもラーメン
体の大半がラーメンでできているんじゃないかと思うくらい頻繁にラーメンを食べている。
ある日、新宿で飲み会があった帰りにその先輩は奢るからということで俺をとあるラーメン屋に連れて行ってくれた。
その店は先輩の地元である熊本が本拠地の店らしい。
その店こそ、今回紹介する「桂花」だ。
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東京のラーメン好きに衝撃を与えた桂花の味
桂花というラーメン屋は新宿には4店舗あるらしく、今回行くのは新宿駅東口にほど近いところにある「桂花 新宿東口駅前店」ということだ。
アルタの裏にある繁華街、その中でラーメン店が立ち並ぶエリアの一角に桂花ラーメンの店はあった。
外観を見た限りでは、かなり狭そうな店だ。
恐らく席はカウンターだけ。厨房のスペースも考えたら席数は10もないだろう。
そんなことを思っていると、先輩が食券を買おうとしていた。
麺の硬さは普通と固めどちらがいいか聞かれたので硬めのものを購入してもらった。
出てきた食券を手にした先輩に続いて店内に入る。
予想していた通り、席数も両手で数え切れそうなくらいのスペースしかない。
先輩が入口近くの席に座ったので、俺もその隣に座ろうとする。
その時、背後にあった階段らしきものに目が行った。
この階段はなんだろう?
その答えを先輩が教えてくれた。
背後にある階段は2階に続いているということだ。
外観では気が付かなかったが、この店には2階にも客席があるということだ。
駅からすぐということもあって、ピークの時はさぞ混むことだろうなぁ。
そんなことを考えていると、先輩が桂花の魅力について話し始めた。
桂花のこだわりの一つが自家製麺らしい。
ラーメンの麺を作る際、かん水というものが使われる。
かん水を使うことによって中華麺が持つあの独特の風味とモチモチっとした食感を引き出すことができる。
しかし、桂花ではかん水の量を必要最低限にとどめているらしい。
小麦の持つ味わいと風味を引き出すためだという。
そして麺と最高の相性を引き出すために作られたスープ。
豚骨と鶏ガラで作られた濃厚なスープなのだが、その旨味をさらに引き出すためのものが桂花のラーメンには加えられているらしい。
それが焦がしニンニクの風味を持った油。
いわゆるマー油だ。
今となっては特に珍しいものでもないマー油。
豚骨ラーメンに使われることの多いこのマー油を考案したのはなんと桂花だというのだ。
歯切れよく、しこしことした食感を持った麺。動物系のまろやかなスープ。そしてそれらを引き出すために加えられたマー油。
桂花が東京に進出したのは昭和43年。当時東京では醤油味の中華そばが主流だった。
そんな中、桂花が提供する熊本の味は衝撃を生み、瞬く間に人気を博した、ということだ。
桂花の看板メニュー「桂花ラーメン」
そうしているうちに注文していたラーメンが届いた。
濃厚そうなスープ。そこに飾られるメンマ、チャーシュー、ネギ、味付き卵。だが一品だけ、ラーメンには見慣れないトッピングがあった。
細く切られている緑色の何か。
よくよく見ると何かの海藻のように見える。
わかめ? 昆布? それとも他の何か?
まあいい。これについては後で食べてみるとして、早速スープから頂いてみることにしよう。
レンゲでスープをなみなみと掬い、口へと運ぶ。
動物系の素材で作られた濃い味のスープに焦がしニンニクの風味がとても豊かだ。
このうまいスープをたっぷりと蓄えた麺を箸でつまんで一気にすする。
旨味をしっかり持ったスープに浸していたのだ。
まずいわけがない。
そして硬めで注文していたのは正解だったかもしれない。
通常のラーメンより硬めに仕上がっている麺の食感は噛みごたえがある。
この硬さは癖になる。
ある程度麺を食べたところで、あの気になる海藻に箸を伸ばす。
見た感じ、葉の部分という感じではない。おそらく茎の部分だろう。
意を決して、謎の海藻を口の中に入れる。
麺のものとは違う硬い食感がする。
そしてこの味、どこかで食べたことがある。
少なくとも比較的メジャーな素材のはずだ。
そう思いながら噛み続けているうちに、ようやく答えがわかった。
茎わかめだ。
桂花のラーメンには茎わかめがトッピングとして乗っているのだ。
中華そばのようなあっさりしたラーメンにわかめがトッピングされているのはたまに見ることはある。
桂花のラーメンみたいに濃厚な味のものに、しかも茎わかめという珍しいものを載せている店はなかなかない。
しかし、このコリコリとした食感もまた面白い。他のラーメンにはないものだ。
他のトッピングもまたうまい。
チャーシューは程よく柔らかく、味付き卵はしっかりと味が染みていた。
その味を楽しむのにただただ夢中になっていた。
スープまでしっかり味わって先輩と共に店を出た後、奢ってもらったお礼を言ってその日は別れた。
トロッとした肉が特徴の「太肉麺(ターローメン)」
数日後、俺は再び桂花新宿東口店を訪れた。
桂花で食べてみたいと思った品があったからだ。
その品は「太肉麺(ターローメン)」。
先日先輩と一緒に訪れた際に他の客が注文して食べていた品だ。
傍らで見ていたのだが、一言で言うとものすごくインパクトのある見た目だった。
先輩に奢ってもらったラーメンを食べながら、「あのラーメンうまそう。あれも食ってみたい」と思っていたほどだ。
まったく。奢っておいてもらいながら他のものに目が行くなんて、なんて図々しい。
だが実際うまそうにみえたのだから仕方がない。
店の外に置いてある食券機で太肉麺の麺硬めの食券を購入して店の中に入る。
今回は訪れた時間が少し遅かったのもあるのか、結構人が多い。
どの客も40代近い。厨房の中にいる店員とのやり取りを見ている限り、きっと常連なのだろう。
俺は店の奥にある席について食券を店員に渡す。
そしてしばらくすると待ち望んでいた品が目の前に現れた。
どうだろうか。この見た目。
たっぷり盛られたざく切りのキャベツ。そして大きな肉の塊。
これが太肉麺だ。
先日食べた桂花ラーメンと比べるとかなりボリューム感が増している。
これは食べごたえがありそうだ。
早速カウンターの上に立てられている割り箸を手に取ってその味を楽しむ。
スープと麺は桂花ラーメンとは変わらなそうだ。
であれば、違うところを味わってみるとしよう。
まずキャベツ。
箸で上から押し込んでスープに浸してから口の中へと運んでいく。
噛むとシャキシャキとした歯ごたえを感じることができる。
時々あるトッピングのもやしとは違う「パリッ」とした食感だ。
そして俺が特に期待していた肉の塊。太肉。
この太肉は桂花が東京進出の際に看板メニューである桂花ラーメンにあうように作られた品だ。
しっかりとアクを抜いた豚のバラ肉を自然な味付けに仕上げた太肉は豚の角煮のような感じで、チャーシューとはまた違った存在感を持っている。
ちなみに「太肉」というのは中国に存在する料理ではなく、桂花が商標登録したオリジナルの名前だ。
2つある太肉のうちの1個を箸でつまむと、ちょっと力を入れれば簡単にほぐれそうなくらい柔らかい。
しっかりと煮こまれている証拠だ。
そんな太肉を口の中に入れる。
肉の塊が赤身と脂身の境から簡単にほつれていく。
味もしっかりと浸み込んでいてうまい。
太肉麺で主役としての役目をちゃんと果たしている。
こんな肉が2個もあるのだ。
本当にありがたい。
しっかりと味合わせてもらいました。
ごちそうさんでした。
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まとめ
さて、今回は自慢の熊本の味を提供する「桂花」を紹介したが、いかがだっただろうか。
桂花で提供されるラーメンが当時東京のラーメン好きに衝撃を与えるには十分な品であったということをご理解いただけたかと思う。
東京のラーメンにすさまじいインパクトを与えることとなったその魅力ある味をぜひとも体験してみてほしい。
【今回紹介した品】
桂花ラーメン 700円
太肉麺 980円
桂花新宿東口駅前店
・住所
東京都新宿区新宿3丁目25-6
・電話番号
03-3352-4836
・営業時間
10:30~25:00(月~木、土日)
10:30~翌4:00(金曜)
(写真と文/鴉山翔一)
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