創業時から一筋に元気を与え続けてきた店「東京豚骨拉麺ばんから」
ふう、久々に当たりの映画だったな。今日まで楽しみにしてたかいがあったってもんだよ。
いくら上映する劇場が少ない映画だとしても映画館が数多く存在する新宿に来ればどこかしらでやっているから、ほんと助かるよ。
さて、もういい時間だし、どっかで飯でも食べようかな。どうせならちょっとリッチな感じの物を食べてみたいところだな。
そう思いながら新宿をぶらつき、歌舞伎町の一番街を少し入ったところでちょうどよさそうな店を見つけた。
それが「東京豚骨拉麺ばんから」だ。
店の前にあるショーケースを見てみるとなかなかうまそうである。特にこのかなり大きな肉が乗っているラーメン。これはかなり気になるな。
ここにしようか。そう迷っていると、ちょうど店員が出てきて「よろしければ中へどうぞ」と声を掛けてきた。
こういう状況になってしまうとなかなか断るというのも難しい。
俺は店員についていくことにした。
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■東京豚骨ばんからにはラーメンに〇〇がのったメニューがある
店内に入り食券機を探したが見当たらない。どうやら店員に直接注文する方式らしい。
新宿でラーメンを食べようとすると大体のところが食券式なので店員が注文を取るという方式が少し新鮮に思えた。
席についたところへ店員の人がおしぼりを持ってきた。
その際この店のおすすめメニューは「角煮ばんから」というラーメンと焼き餃子だということを告げられた。
メニューを見てみるとその「角煮ばんから」の正体がわかった。
どうやら、ラーメンの上に大きな豚の角煮が乗っているらしい。
角煮が乗っている麺類といえば沖縄のソーキソバが最初に思いつく。
高校生の時に就学旅行で沖縄に行った際に食べたことがあるが、ソーキソバに乗っているあの肉は豚のあばらに近い部位の肉を使っていた。
ここばんからのものはどうやら豚バラ肉のブロックを使った角煮らしい。白飯のおかずにすれば最高の逸品になるだろう。恐らく3杯はいける。
だが、そんなうまそうな角煮をここではラーメンの具材として使うらしい。
そこでふと思った。
はたして、そんなものがラーメンとあうのだろうか。
いくら作り方にこだわったとしても角煮は角煮。チャーシューとは違うのだ。甘辛い角煮が塩気の多いラーメンにあうとはとても思えない。
正直言って疑問に尽きる。
だが、真相を確かめたかったら頼んで実際に食べてみるしかない。
俺は店員をよび、「ばんから角煮」を頼むことにした。
それにしてもこのばんからというのはどういう意味なのだろうか。
そう思いながらメニューを見ているとその意味について書いてあった。
ばんからというのは「蛮カラ」「番カラ」という言葉からという。スマホで調べてみると先進的なとか流行とかを意味する「ハイカラ」の対義語にあたる言葉らしい。
つまり流行などにとらわれずただひたすら自身が決めた道を突き進む、そういった意味を込めたラーメンだということだ。
これは期待して待っていよう。
■ほのかな甘みがするスープ「角煮ばんから」
さて。注文していた品が届いた。
写真で見はしてはいたが、現物を見るとやっぱり角煮が入っているというインパクトが違う。普通のラーメンだったらチャーシューが具材の中で特に存在感を主張しているところだが、そのスペースを角煮が堂々と占拠している。
スープは豚骨をベースにしていると書いてあったが、普通の豚骨と比べるとだいぶ色が濃い気がする。この独特の色の正体は何だろうか。醤油以外にも何か入っているのだろうか。
試しに一口。
……………………ん?
気のせいか? もう一口飲んでみる。
やっぱりそうだ。気のせいじゃない。
このスープ、なにかほのかに甘いぞ。
なんでスープが甘いんだと疑問に思ったが、目に入ったあるものである推測に至った。
もしかして、このスープに角煮の汁が混ぜてあるのか?
角煮の煮汁といえばこんな感じの甘辛さを持った味付けだったと思う。それが隠し味として入っているのかもしれない。心なしかスープの色も少し角煮の汁によって赤みを帯びているように感じる。
背脂がだいぶのっかっていたからかなりコッテリしているのかと思ったが、そんな印象はあまり感じられない。甘味の強いロースの背油を圧力なべで仕込み、常に焚きたてを出しているというこだわりようなのでその効果が出ているのかもしれない。
推測もその辺にして、そろそろ麺のほうも食べよう。
麺は中くらいの太さでストレートなものだ。スープを少し吸っているからなのか。こちらもほのかに赤みを帯びている。その色合いはまるで名古屋の味噌煮込みのうどんのようだ。
早速一口。うん。やはりうまい。
程よい具合にスープの旨味が麺にしっかりとついてくる。これがストレートでなく縮れ麺だったらスープの味がうつりすぎてくどくなってしまうだろう。
スープの特徴をよくつかんでいるからこその選択、といえるだろう。
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■東京豚骨拉麺ばんからが一番こだわる豚の角煮
さあ、そろそろこのラーメンの本丸を攻めさせてもらおうか。
そう思った俺は角煮を箸で持ち上げた。
おお! なんという重量感! 今まで食べてきたラーメンの具材として使われている肉に対してこれほどの重みを感じたことは一度もない。
持ち上げた肉の塊は厚さ2センチ近くあるだろうか。チャーシューですらこんな分厚いものが入っているところなんか見たことがない。こんなボリュームのあるものがラーメンに入っているとは驚きだ。
こんなものを上にのせられていた麺はさぞかし重く、窮屈だったであろう。今まで待たせたな。だがそれももうこれまでだ。
では、一口がぶりといかせてもらおう。
うーん。うまい。
その一言に尽きる。
程よい柔らかさを持った肉はそっと嚙めばすぐにほつれていく。箸でも簡単に切ることができるほどの柔らかさだ。
脂抜きがしっかり行われているためか、くどい脂っこさは感じない。むしろ余計な脂が抜けているおかげで、脂身の部分もちょうどいいあんばいに仕上がっている。
味も甘辛く、また豚本来の旨味を味わうことができる。
これが一日かけて出汁になじませて翌日調味料で味付けを行いながら煮込むという手間をかけて作り上げた角煮の素晴らしさなのかもしれない。しかも作り置きをせずにその日使う分しか仕込まないということなので変な臭みが出ることもない。
本来一緒になることはないはずのラーメンと角煮が見事に合わさっている。
ばんからの角煮はラーメンにあわせるために作られた角煮といえるだろう。
ごちそうさんでした。うまかったです。
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■まとめ
さて、今回は何かの縁もあって「東京豚骨拉麺ばんから」で食事することになったが、まさか豚の角煮がラーメンにここまであうとは思いもしていなかった。
創業当時から「元気を食べてもらいたい」という精神のもとでばんからのラーメンが作られている。
ラーメンはシンプルな料理ゆえに流行などに振り回されることが多い。
しかしばんからの味は流行りや廃りに振り回されることなく、ただまっすぐ一筋に保ち工夫を続けてきた。
すべては「おいしかった」という言葉を聞ける最高の一杯を作り上げるために。
そして今日までここへ来た人に元気を与え続けてきた。
それはそれからも変わることはないだろう。
さて、せっかくばんからで元気をもらったんだ。このまますぐに帰ってはもったいない。
せっかくの新宿だ。もう少し遊んでいくとしよう。
・店名/東京豚骨拉麺ばんから 新宿歌舞伎町店
- 住所/東京都新宿区歌舞伎町1-17-5 第二安田ビル1階
- 電話番号/03-6205-5215
- 営業時間/11:00~翌8:00 年中無休
(写真と文/鴉山翔一)
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