新宿・小滝橋通り沿い。
この場所はとあるものの激戦区でもある。
そう! ラーメンだ。
この小滝橋通りにはラーメン店が数多く存在する。
そんな数多ある店の中で、今回俺が目を付けたのがここだ。
龍の家(たつのや)。
福岡の久留米に本拠地を構えている豚骨ラーメンをメインに扱っているラーメン屋。
その新宿店がここ小滝橋通り沿いにある。
前に近くを通った際に、若者たちがこの店の前に行列ができていたのを目にしたことがある。恐らくそれだけ人気のある店なのだろう。
だが、本当においしいのだろうか?
若い年代ほど、実際に歩き回って探すやり方を嫌い、雑誌やネットといった楽な方法で情報を得る。
それらの情報は根本的な根拠に欠けていたりする。酷いと、ろくに取材もしていなかったりするのもあるくらいだ。
そんなものを情報源として集まってできた行列などほとんど一見の人間が作るものだ。
はたして実際のところどうなのか? これは実際に行って確かめてみるしかない。
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1.行列ができる「龍の家」新宿店
とある日曜日の昼時、俺は龍の家新宿店にやってきた。
店の前に来ると、やはり行列ができていた。
10人くらいはいるだろうか。皆若い。
彼らはどういった経緯でこの店を知り、この場所へ来たのだろうか。
店先を見ると列の並び方についての立て看板がある。これが置いてあるということは、行列ができるというのは日常茶飯事なのだろう。そうでもなければこんなものを置く必要はない。
しばらく待っていると、店員に声をかけられた。
どうやら先に食券を買うシステムらしい。
一度店内に入り、券売機の前に立つ。
どうやら店の売りである豚骨ラーメンは2種類あるらしい。
一つはにんにくと焦がし玉ねぎをベースにした油と自家製辛みそを用いた「とんこつ こく味」。
もう一つは豚骨本来の旨味を味わうことができる「とんこつ 純味」。
ふむ。
2種類あるとは想定していなかった。さらにその下にはつけ麺が同じくらいの大きさのボタンで設けられている。しかもこのつけ麺は東京限定のようだ。
恐らくこちらも同じくらい店にとっては推している品なのだろう。
さて、どうするか。
とりあえず今回は店の代表メニューだという「とんこつ こく味」にしてみよう。
食券を購入して店員に渡し、再び列に並ぶために外に出る。
さて、どんなものが出るのか。今から楽しみさせてもらうとしよう。
2.焦がしの風味が豊かな「豚骨ラーメン こく味」
そこから5分ほど待つと再び店内に入ることができ、ようやく席に着くことができた。
行列ができていただけあって、店内は満席だ。
そして少し待つと、注文した品が出された。
確かにうまそうではある。さすが本店が福岡にあるというだけのことはありそうだ。
コクを全面的に売りにしているだけあってスープもかなり濃厚そうだ。背油もたっぷりと乗っている。
これはうまいだろう。
だがそれはあくまで見た目での判断だ。真相は食してみないとわかりはしない。
まずはスープ。
店のこだわりはスープに出ることが多い。だからこそはじめてきた店ではまずスープから飲んで味を確かめる。これが俺のやり方だ。
なるほど。確かに濃厚だ。背油がたっぷりと入っているのにそこまでくどさを感じない。変な臭みもなく、豚骨の旨味をしっかりと味わうことができる。
次に麺。
麺とスープを合わせて食べてこそラーメンの味を知ることができる。
今回、麺はあえて普通にしてある。
本場では「バリカタ」とか「針金」といったものがあるらしいが、ここは東京だ。普通で十分うまく食べられるだろう。
うむ、うまい。
濃厚なスープが麺に程よく絡んでいる。
食べるのも終盤に差し掛かったところで、俺はふと思った。
このコク味の売りである焦がし玉ねぎの要素、それは果たしてどこにいったのだ?
はじめにスープを飲んだ段階ではそこまで感じはしなかった。
ではどこに? そう思いながらスープを飲んでいると、突然味が変わった。
余りのことにもう一度確認のために飲むと、底のほうで確かに味が変わっている。
ここに焦がし玉ねぎで作られた香油が沈んでいたのだ。
味に変化が生まれたことで次々に飲み続け、気付けばスープをすべて飲んでいた。
3.サプライズもある「つけ麺 もつ」
次の週の日曜。俺の足は再び「龍の家」に向いていた。
またあの豚骨ラーメンを食べに来たのではない。東京限定と謳っていたあのつけ麺が気になり来たのだ。
普通のつけ麺であればそこまで気にはしていなかった。だが今回は違う。
「龍の家」のつけ麺にはどうやら「もつ」が入っているらしいのだ。
つけ麺ともつ。本来であれば合わさることのないものがここ「龍の家」では合わさっているらしい。
果たしてそれはどんなものなのか。それを確かめたくて来たのだ。
例のごとく食券を渡し、店内に入って待っている俺に店員があるものを勧めてきた。
それが、これだ。
どうやら店自慢のもやしらしい。無料ということなので少し小皿にとって食べてみる。
む。見た目のわりに、そこまで辛くない……、と思っていると後から少しピリッとした辛さがのどに走る。普段あまりこういった辛味を効かせたものはあまり食べないのだが、これはなかなかハマりそうな味である。
しばらくするとつけ麺が出てきた。
どうやらつけ汁のほうにもつが入っているらしい。
試しにまずつけ汁を一口。
ラーメンのようなこってりした感じではなく、かなりあっさりとしている。が、焦がしニンニクが聞いているのか、香ばしさは先のラーメンとは比較にならない。ラーメンのスープとはまた違った旨さがある。
麺もどうやら豚骨ラーメンに入っていたものとは違うらしい。モチモチ感がラーメンのものより多い気がする。
そして、食べていて何よりもアクセントになるのが、もつだ。
もつから出た旨味なのか、より味に深みが増している。
さらにカリカリになっているもつが麺と一緒に食べた際に食感のバリエーションを生み出している。
麺もひとしきり食べ終え、そろそろお暇しようかというところで、俺は店員に声をかけられた。
「よろしければ、締めにスープでお粥はいかがですか?」
…………なぬ。スープでお粥? もしやこのつけ汁でお粥を作るというのか?
サービスでつけ汁にお粥を入れてくれるということなので、俺はそれを頼み、店員につけ汁の入ったお椀を渡した。
つけ汁の締めになるものとしたら出汁の効いたスープで割るというのが一般的だろう。
だがそれに反して米を入れるというのがここの締めらしい。
単なる客寄せのための珍しさを演出するためのものか? それとも……。
そうこうしているうちにモノが届いた。
見た目はそこまで大きくは変わっていない。
お粥は沈んでいるらしく、俺はお椀の底をかき回して一口レンゲでそれをすすった。
……うまい。想像以上にうまい。
米自体が焦げているというわけではないはずなのに香ばしさが口いっぱいに広がる。つけ汁に含まれている焦げの風味がこうもいい仕事をするとは驚きだ。
つけ汁をあっさりした風味にしてあるのもこのためなのだろう。
濃厚なスープでは締めにこのような逸品を作り出すことはできない。だからこそこのようなつけ汁に仕上げたのだろう。
まさか最後の最後でこのような楽しみ方をできるとは思わなかった。
恐れ入った。
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まとめ
龍の家新宿店。
ここで提供されるラーメンとつけ麺は俺が想像していた以上に見事なものであった。
全国に店を展開し、そしてここ小滝橋通り沿いでも特に人気を持つことができる味だというのが実際に食してみて知ることができた。
自慢の豚骨ラーメン、そして東京という場所でしか食べることのできないつけ麺。
本当にうまいのかどうか疑うならぜひとも一度、食べてみてほしい。
決して無駄にはならない。そう俺は思っている。
龍の家新宿店
住所 東京都新宿区西新宿7-4-5 藤野ビル1F
営業時間 11時~翌0時
電話番号 03-6304-0899
(写真と文/鴉山翔一)
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