小説『お嬢様が新宿の立ち呑み屋へ行ってみた』

義父が縁側で足の爪を切っていた。

青々と伸びた梅の枝から小鳥が飛び立ち梅の葉が小さく揺れた。

「お父さま、ソノコは、この店へ行ってみとうございます」

ソノコはスマホを持って義父のもとへ近づいた。

ソノコは、インターネットで行ってみたい店を検索していたのだ。

 

「どうしましたか?」

 

「立ち呑みというのは、やはり、立ったまま飲むということでしょうか?」

「そうですよ」

「そのようなこと、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫って?」

「マナーに反するのではないでしょうか?」

 

夫のヨシオは、仕事が忙しくて、外食など連れて行ってくれたことは一度のなかった。

 

女子大生だったころ、テーブルマナーを学ぶために

高級ホテルのフレンチレストランへ父親に何度か連れて行ってもらったことがある。

 

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■義父とデートする新妻ソノコ

 

前回、はじめて焼き鳥屋へ行った。

焼き鳥というものをはじめて食べた。

義父とのデートは楽しかった。

 

焼き鳥というものは、串から1つずつ外すのではなく、

串を持って、そのままかぶりつくものだと教わった。

義父のやさしさに触れると、安心感に満たされていく。

 

義父の低音の声が好きだった。

たくましい腕も、厚い胸板も、太い首筋も好きだった。

 

義父の笑顔を見ると胸が熱くなる。

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夕方5時ころに新宿へ着いた。

義父と2人で新宿の地下道を歩き、ビルのなかへ入る。

階段を上るとすぐにその店はあった。

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「立ち呑み串カツ田中・新宿京王フレンテ店」だ。

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■ハッピーアワーだとジンビームのハイボールが100円!

 

「まあ、ホントに、みなさん、立ってお食事されているんですね」

ソノコは驚く。

夕方5時ごろだが、8割がた客が埋まっていた。

 

カウンター席とテーブル席が2つほどあり、店外にテーブル席が2つあった。

もちろん、席といっても椅子はない。

 

ソノコと義父は店内のテーブル席に案内された。

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「ハッピーアワーだから、ジンビームのハイボールが100円みたいですよ」

義父がニッコリ笑うと胸がキュウンとする。

 

「ハイボールって何ですか?」

「ウィスキーを炭酸で割ったものですよ」

 

そこへ若い女性店員がやってくる。

「何にしましょうか?」

楽しそうな笑顔で注文を取る女性店員だった。

「じゃ、ハイボール2つで」

「ハイボール2つですね。ありがとうございます。

串カツの注文は、こちらの紙に書いてくださいね」

店員はボールペンと注文用紙を置いて行った。

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「何を食べましょうか?」

メニューを眺めながら義父が言う。

 

「ソノコ、わかりませんから、おまかせします」

「じゃ、適当に頼みますね」

義父はそう言って、注文用紙に次々と書き込んでいった。

 

  • 「立ち呑み串カツ田中」新宿京王フレンテ店のメニュー

・名物!肉吸い豆腐           230円

・牛すじ土手焼き              100円

・こんにゃく土手焼き       100円

・だいこん土手煮              100円

 

〈串カツ 全100円〉

・レンコン           100円

・白ネギ              100円

・ぎんなん           100円

・イカ             100円

・にんにく           100円

・ハムカツ           100円

・レバカツ           100円

・玉ネギ              100円

・エビ    100円

・ししゃも           100円

・鶏もも              100円

・たらこ              100円

・貝柱    100円

・うずら              100円

・たけのこ           100円

・トマト              100円

・アスパラ           100円

・串カツ牛           100円

・串カツ豚           100円

・紅しょうが       100円

・アジフライ       100円

・チーズ              100円

・もち        100円

・ウィンナー       100円

・豚しそ              100円

定番5本セット    500円

串カツ牛・串カツ豚・レンコン、玉ネギ、エビ

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〈おつまみ〉

・えだ豆                  190円

・マカロニサラダ              190円

・ガリ〆鯖                 290円

・つけもの                 290円

・さいぼし               290円

・貝柱お刺身           290円

・えんがわユッケ              230円

・冷奴            190円

・冷やしトマト        230円

・自家製厚揚げ        230円

・にんにく丸揚げ              230円

・鶏モモ肉の唐揚げ(3個)           190円

 

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■若い女性スタッフは笑顔の接客最優秀賞!

 

額に入った表彰状が壁に飾ってあった。

「笑顔の接客最優秀賞だって書いてありますわ」

ソノコが表彰状を見つけて言った。

 

「あの女性店員のことじゃないかなぁ」

「たしかに、ステキな笑顔ですわね」

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女性店員がハイボールを2つ持ってやってくる。

「あの表彰状はあなたのことですか?」

義父が女性店員に尋ねた。

 

「はい。そうです!」

満面の笑みで答えた。

たしかに、笑顔が素晴らしい女性店員だった。

 

「それではこれを」

義父が注文用紙を渡す。

女性店員はそれを受け取り「承知いたしました!」と元気に声を発した。

 

見ていると、あちらこちらでお客に声をかけられている。

そのたびに女性店員は笑顔で何か話していた。

「ステキな方ですね」

ソノコが嬉しそうに言った。

「それでは乾杯しましょう」

義父とソノコはハイボールのグラスを合わせた。

 

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■串カツはソースをつけてかぶりつく!

 

最初に「ガリしめ鯖」がやってきた。

ガリとしめ鯖を和えたものだ。

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「ガリというのは何ですか?」

「お寿司についてくるショウガですよ。薄くスライスしたショウガの甘酢漬けです」

「ああ、あれをガリというのですか・・・」

 

「ま、食べてみてください」

義父にうながされて、ソノコは一口「ガリしめ鯖」を食べてみた。

 

しめ鯖の食感と甘味が口のなかに広がる。

ガリのおかげで生臭さはまったく感じない。

 

「おいしいですわ」

ソノコは目を輝かせた。

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そのとき、串カツがトレイに乗ってやってきた。

「紅しょうがの串揚げを食べてみてください。不思議な味がしますよ」

義父が串を渡してくれた。

「いいですか、先に私がやりますから、見ていてくださいね」

そう言って、義父は紅しょうがの串をソースにつけて、がぶりと食らいついた。

 

「こうやって、ソースにつけてかぶりつくんです」

「できるでしょうか?」

「大丈夫です。やってみてください。この前、焼き鳥も上手に食べていましたよ」

 

ソノコは言われた通り、串をソースにつけてかぶりついた。

紅しょうがの辛味に衝撃を受ける。

「ちょっと、しょっぱいです」

「ああ、ソノコさんには、ちょっと刺激が強すぎたかもしれませんね。

大丈夫ですよ。残してください。私が食べますから」

 

「すみません」

ソノコは口のなかを洗い流すようにハイボールを飲んだ。

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「こちらのアジフライならいけるんじゃないですか?」

「ああ、アジフライなら」

そう言い、ソノコはアジフライを食べてみた。

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■この義父と嫁はやってるのか、やってないのか?

 

「不倫カップル監視委員会」は、このカップルをずっと追いかけている。

委員会のメンバー全員、このカップルのことが気になってしかたないのだった。

 

司会進行役の宮追博之の魂が言う。

 

「わたくし、女性のなかへ入って過去の記憶を探ってみました」

 

すると、そこへせっかちなペッキーの魂が口を挟む。

「で、あの2人はやってるの? やってないの?」

 

「どうなんでしょうね。私はやってると思うんだけどなぁ。

不倫している男女と、していない男女を比較すると、

食事どきの雰囲気が違うんですね。

空気感というか、仕草というか・・・」

石口が分析する。

 

「たしかに、そういう面はあると思いますが、このカップルの場合は、

ちょっと事情が違うかもしれませんねぇ」

 

宮追がダラダラと話しているところへペッキーが、

「つべこべ言ってないで、どっちなの?」

と宮追に詰め寄る。

 

「結論から言いますと、あの2人はやってません。

ただ、キスは、何度もやってます。ハグは、ほぼ毎日です」

宮追は、ペッキーを抑えつけるように言った。

 

「なるほど、あの男は、たくましい体をしているくせに、案外臆病なんですね。

サッサとやっちゃえばいいのに」

五体不満足な体で数々の女性と浮気経験のある乙成が皮肉まじりに苦笑する。

 

「それは、無理でしょ。実の息子の嫁ですよ!

簡単に手は出せませんよ」

宮追が反論する。

 

「ボクだったら、一刻も早くやっちゃうけどなぁ。

だって、女性のほうは絶対に求めてますよ」

と乙成。

 

「欲求不満を抱えていることはたしかです。

ほぼ、毎日のように1人で遊んでらっしゃるみたいですから・・・」

宮追がもったいぶった言い方をする。

 

「男のほうも、本心では欲しくてたまらないんじゃないっすか?」

ペッキーが吐き捨てるように言う。

 

「いかがでしょうか? このカップルは不倫と認定しますか?」

宮追が、3人の霊に質問した。

 

「やってないんだから不倫じゃないですよ」

と乙成。

 

「不倫じゃありません」

と石口。

 

「でも、遅かれ早かれ、このカップルはやるよ!」

とペッキーが2人の男女に熱い視線を注いだ。

 

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■まとめ

 

世の中の不倫が気になって成仏できない浮遊霊たちが、

今日も夜な夜な、街をさまよい、

 

不倫カップルを見つけては裁きまくる!

それが、「不倫カップル監視委員会」

 

今回の舞台となったお店の情報は下記に・・・。

 

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  • 店名 立ち呑み串カツ田中 新宿京王フレンテ店

  • お問い合わせ

 

  • 住所

東京都新宿区新宿3-4-8 京王フレンテ B2F

 

  • 交通手段

新宿駅A6出口より徒歩3分・新宿三丁目駅B2出口から徒歩1分

新宿三丁目駅から79m

 

  • 営業時間

平日 16:00~23:45(L.O.23:15)

土日祝12:00~23:45(L.O.23:15)

 

  • 日曜営業

定休日なし

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