やあ、いらっしゃい。今日はどうしたんだい。
前に購入した万年筆の元々中に入っていたカートリッジインクを使いきったから、今度は他のインクも使ってみたいという事か。
それはいいアイディアだ。
万年筆の醍醐味といえば自分でインクを自由に選べることに他ならないからね。
そうなのだが、いまいちどのインクを選べばいいかわからない?
それはもっともだ。
何も下調べをしていなければ余計なトラブルになりかねない。
よし、では今回は万年筆のインクについてと新宿でおすすめの店についてレクチャーしよう。
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1.万年筆のインクの種類について
インクを買おうにもどれを選べばいいのかと迷う人もいることだろう。
実際問題、インクによっては手入れを怠ったことで万年筆が使い物にならなかったり、壊してしまう原因になってしまうこともある。
そうならないためにまずはインクについて説明していくことにしよう。
万年筆のインクは万年筆のメーカーが出しているものから絵の具などのメーカーが作っているものもあるが、基本的には3つの種類に分けることができる。
それぞれの特徴についてこれから解説していこうかと思うが、その前に言っておかなければならないことがある。
万年筆のインクにはボールペンでいうところの「油性」はない。
基本的には全て水性だ。
「そんな馬鹿な!」と言いたそうな顔をしているけれど、事実なのだから仕方ない。
理由としては、油性のインクは粘度が高いため万年筆には適していないのだ。
では万年筆で書いたものは全部水に流れてしまうようなものなのかというとそんなわけはない。
というわけで、それぞれのインクの特徴について解説していこう。
2.染料インクの特徴
まず染料インク。
このタイプのインクは文字通り、染料が紙に染み込む事で字を書いている。
わかりやすく言うなら水彩絵の具のようなものだ。
このタイプのインクの特徴としては、インクの色が豊富なことがある。
万年筆ブームの火付け役とも言えるパイロットの「色彩雫」というインクは全て染料だ。
そのため微妙な色の違いなどを出しやすいという利点がある。
もちろん欠点もある。
基本的に染料のインクは耐光性や耐水性に難がある。
特に水については顕著で、インクによっては水に浸けるとほとんど流れてしまう。
だがこの欠点はメンテナンスをするときは利点となる。
ペン先を乾かしてしまったというときでも水に浸けるだけで固まったインクが溶けるため、すぐに復活させることができる。
使いやすさの面で優れているため、ほとんどのメーカーのインクはこの染料インクだ。
3.顔料インクの特徴
続いて顔料インク。
顔料インクはインクの中に細かい着色料が溶けているインクだ。
紙に書かれると着色料のみが定着する仕組みになっている。
言ってしまえばコピー機やレーザープリンターのトナーのようなものだ。そういったものが溶けていると思ってもらえればいい。
顔料インクの特徴は染料と真逆、つまり耐光性と耐水性に優れているということだ。
それをわかりやすくためしたものを今回はちょっと用意した。
この2枚のメモはメーカーは違えど、どちらも染料インクで書かれているものだ。
これを水にしばらく浸したのち引き上げると……
このようにインクに含まれている染料が流れて字が薄くなってしまう。
これが顔料インクになるとどうなるのか。
同じように水に浸したものを引き上げると……
ほら。まったく薄くなっていないだろう。それどころか滲んですらいない。
これが顔料インクの強みだ。
これほどの実力があるのなら、はがきのあて名なんかや長期保存しておきたい書類なんかにはうってつけといえるわけだ。
しかし、この利点が同時に弱点でもある。
どうゆう事かって?
インクを入れたまま長期間使っていなかったり、蓋を開けたまま乾燥させてしまった利すると中で顔料が詰まってしまい、最悪ペンそのものを修理に出さなければいけなくなる。
インクの色も基本的にそんなに多くはない。
定期的な洗浄も必要となるため、若干面倒なところがあったりするインクでもある。
また、値段も染料インクと比べると高い。
そういった理由もあってか、現在顔料インクを販売している会社は少ない。
国内ではセーラー万年筆とプラチナ萬年筆の2社のみだけなんだ。
だが、夏場の汗などで流れたりしないから個人的には好きなインクだね。
3.古典インクの特徴
最後に紹介するのが没食子インク、通称古典インクというものだ。
万年筆を使う前まではボールペンやシャーペンしか使ってこなかった君には初めて耳にするインクだろう。
没食子インクは元々つけペンに使われていたインクだ。
染料系インクの一種ではあるのだが、最大の特徴は時間を置くと書いた文字の色が黒っぽく変わるというところにある。
これはインクに含まれる成分が酸化し、化学反応を起こすことで文字の色の変化が起きている。
そのため、水などがかかっても染料の部分は流れるが、化学変化によって用紙と結合した箇所は字が残るという原理になっている。
よくはわかないという人もいるだろうが、まあ書いた箇所が化学反応することで耐水性や耐光性を持たせていると覚えてもらえれば充分だ。
このインクがなぜボールペンで使われないのかが気になる? なかなかいいところに目を付けたね。
古典インクには塩酸や硫酸といった酸性の薬品を使用しているため、鉄製のペン先や鉄製のボディの万年筆を腐食させてしまう可能性があるということだ。
高級な万年筆のペン先が金でできているのはここに由来していることが大きい。
近年ではペン先も改良が進み、そのようなことになるのは少ないと言われているが、用心するに越したことはない。
そして、色に関しても基本的には「ブルーブラック」という色しかない。
そもそもブルーブラックという色はこの古典インクのことを指していた言葉でもあったんだ。染料の青から時間が経つにつれてブラックの色になっていくことからブルーブラックという言葉が生まれた。
そこに白羽の矢を立てたのはプラチナ萬年筆。
「クラシックインク」というシリーズで6色の古典インクを展開している。
このクラシックインクは実際に書いてからすぐに色が変わっていくので見ていてとても面白いインクだ。
私もこれのカシスブラックという赤系の色を使っているよ。
最初は鮮やかな赤なのに、時間が経つとパッケージのようなカシスの色になるので結構好きだね。
元々は万年筆の標準インクではあったのだが、アメリカの環境保全の基準が変わったことから、古典インクから通常の染料インクに変わってしまっているメーカーもある。
高級万年筆の筆頭であったモンブランのインクがそうだ。
なので、ゆくゆくは製造されなくなってしまう可能性もあるインクでもあったりする。
試す機会があればぜひとも試してみてほしい。
5.新宿でインクを買うときにおすすめの店
万年筆のインクにどんな種類のものがあるかはこれでわかったはずだ。
では続いて新宿でインクを買うのにオススメな店を紹介していくことにしよう。
まず最初に紹介するのは画材や文房具の店として、君を含め誰もが真っ先に思い浮かぶであろうお店。
そう、「世界堂」だ。
世界堂の新宿本店、そして新宿西口文具館どちらでも万年筆のインクは取り扱っている。
世界堂で販売されている商品は基本的にはどれも2割引きになっているんだ。
買うものは決まっているが、少しでも安く買いたいというのであれば真っ先に候補として上がる店であることは間違いないね。
続いては以前、この新宿マガジンでも紹介した筆記具の専門店「キングダムノート」だ。
この店の最大の特徴といえばやはり各メーカーのインクのサンプルが見れることだろう。
実際にどういった色合いを見れるというのは本当にありがたい限りだ。
また気になったインクについては試し書きを行うこともできる。
気になるインクが何種類もある、というような人はここを訪れて試してみるのもいいだろう。
私も気になるインクがある時はまずここを訪れるようにしている。
最後に紹介するのは、ちょっと意外な場所だ。
君を含め、ほとんどの人が「なぜここを挙げるのか?」と疑問に思う場所だ。
値段も特段安いわけでもない。種類も上の2箇所と比べるとそんなに多くないというかむしろ少ないだろう。
にもかかわらずここを紹介するのには明確な理由がある。
パイロットの人気インクである色彩雫のミニボトルがバラで購入できるからだ。
24色というとんでもない種類がある色彩雫のボトルインクは50ミリリットルの通常サイズと15ミリリットルのミニボトルの2種類がある。
通常、このミニボトルは3個セットでしか購入できない。
しかしそれをこれから紹介する場所では1個づつバラで購入することができるのだ。
ではそんなことができる店というのはどこなのか。
実は新宿の紀伊国屋書店の1階にある文房具売り場がそうなのだ。
意外だと思う人もいることだろう。
色彩雫で気になる色があるけど、通常の大きなボトルではなくまずは小さいボトルで試してみたいという人にとってはとてもありがたい店であることだろう。
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まとめ
これで今回のレクチャーを終了するけど何か質問はあるかね?
ふむ、ボトルインクを買った時の補充方法についてか。
君が買ったラミーの万年筆を含め、多くのカートリッジ式の万年筆は「コンバーター」という専用のインク補充部品が出ている。
これをカートリッジを使っていた時と同じように万年筆本体に刺して、それで補充すればいいだけだ。
簡単だろう。
ただし、他のメーカーのインクを入れるのは基本的には自己責任になるからそこはしっかりと覚えておいてほしい。
ではこの辺で……、ん? どうしたんだい?
万年筆を使っているときにかすれる時がある?
ふむ、それに関しては私にはちょっと調整は難しいな。
今度新宿でこのようなイベントがある。
そこで専門の人に一度見てもらった方がよさそうだね。
どんな感じだったのかを私にもあとで教えてほしい。
(写真と文/鴉山翔一)
世界堂新宿本店
・住所
東京都新宿区新宿3-1-1
・電話番号
03-5379-1111
・営業時間
9:30~21:00
世界堂新宿西口文具館
・住所
東京都新宿区西新宿1-11-11
・電話番号
03-3346-1515
・営業時間
9:30~20:00
キングダムノート
・住所
東京都新宿区西新宿1-12-5ブランシェビル6F
・電話番号
03-3342-7911
・営業時間
10:30~20:30
紀伊國屋書店新宿本店
・住所
東京都新宿区新宿3-17-7
・電話番号
03-3354-0131
・営業時間
10:00~21:00
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