日々変わりゆく新宿にある「長野屋」でレトロな味を見つけた

    新宿の街は日々進化を続けている。

    新宿駅南口といえば大型バスターミナルのバスタ、NEWoManやフラッグスのような複合商業施設、そして7月に入ってからは新たにドン・キホーテができた。

    当時の姿を俺は見たことがあるわけではないが、昭和の時代と比較したら全く違う町に見えてしまうかもしれない。

    でも変化が激しい南新宿で昔ながらな感じの店を見つけた。

    下りる場所を間違えて新宿駅南口から出て、エスカレーターで降りたときにたまたまその店が目に入った。

    赤い軒先には白い字で「長野屋」と書かれている。そして入口には紺色の暖簾に同じように白で店の名前が書いてある。

    長野屋入口

    見るからにレトロな定食屋といった感じだ。正直テレビでしかこんな感じの店は見たことない。

    よし。ここにしよう。

    ちょうど昼飯を食いっぱぐれていた俺の腹はこの店にしようと決心していた。

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    1.昭和のドラマに出てきそうな家庭的な定食屋

    自動ドアのスイッチを押し、暖簾をくぐって中に入ると表の印象と変わらない店内が目に入った。

    店内

    時刻は午後2時半になろうとしている。さすがにこの時間ともなると人は疎らかと思っていたが、そこそこの人数がいる。みな俺のように食いそびれていたのだろうか?

    だが一人客が俺しかいないからそうとも限らない気がする。

    店の奥の席に案内された俺は早速メニューを見やる。

    メニュー1

    メニュー2

    うーむ。なかなかいい具合に家庭的な感じの料理が多いな。そしてどれも盛り付けられ方が昭和っぽい。

    ん?

    「全品消費税として20円頂きます」

    おいおい。えらくざっくりしているな。

    計算やメニュー表を作り直すのが面倒なのかはわからないけど、ものすごいおおざっぱだ。

    血液型占いを信じているわけじゃないけど、ここの店主はきっとO型なのだろう。

    フロアにいた女将さんが水の入ったグラスを持って注文を取りに来た。が、まだ決めあぐねていた俺はとりあえず水だけ受け取ってメニューをにらみつけた。

    実際問題、どれもうまそうなんだよなぁ。

    特大生カキ定食。揚げてる時点でもう生じゃないだろうに。

    とんかつ定食にチキンカツ定食。今日はかつっていう気分じゃないんだよな。

    じゃあ煮魚とか焼き魚か? 遅い昼飯としてはちょっと質素な気がする。

    結局何がいいんだよ、俺。そう思っているとある定食が目に入った。

    魚フライ定食。

    写真を見る限り、フライの正体は恐らくアジだろう。つまりアジフライ定食というわけだ。

    アジフライか。そういえばこの前知り合いが深夜にやってる番組を見たせいかやけにアジフライについて熱く語っていたな。

    そういえば、アジフライって最後に食ったのいつだ?

    スーパーとかで売っているところはよく目にするも、購入することはそう多くはないアジフライ。

    最後に食ったのは恐らく数ヶ月くらい前になるだろうか。

    何だろう。急にアジフライが食いたくなってきた。

    おし。とりあえずメインの品は決まった。

    あとはそこへ添える一品。できれば白飯を加速させるようなものがいいのだが、何があるだろう。

    珍しいことに定食のメイン料理は全部単品でも注文できるようだ。だが、そこから選ぶのは少し違う気がする。

    小鉢的なものを探していると、目に留まったのは「きんぴら」だ。

    味の濃いきんぴらであればフライとは違った形で飯のパートナーになるはずだ。

    よし。今日の飯の布陣はこれで行こう。

    2.揚げたてサクサクの魚フライ定食

    注文した後にそういえば厨房はどこにあるんだろうと気になっていたが、どうやら2階にあるらしい。

    エレベーターで降りて来た料理が俺の前に運ばれてきた。

    最初に届いたのは魚フライ定食だ。

    魚フライ定食

    メインのフライと一緒に並べられるのは茶碗に盛られた白米と味噌汁、そして小皿に拵えられたタクアンと漬物。

    見るからに平凡。だがそれがまた良い。

    とても家庭的な感じがする。

    早速ソースをフライにかけて一口齧り付く。

    揚げたての衣はソースの水分を吸ってももろともしない。

    「サクッ!」と歯切れのいい音を立てて噛み切られる。

    衣に守られていたアジはふんわりと軟らかい。

    そして口の中でソースが衣と魚の間へと侵食していく。

    それを感じながら一口目をじっくりと泳がせる。

    いい。実にいい。揚げたて最高。

    やはりフライはこうでなくては。

    二口目は一口目よりも大きめに齧り付き、そこへすかさず白米を運ぶ。

    ソースの甘味とアジのうま味。そこにライス。

    うまくないわけがない。

    飯のペースが上がっていく。

    合間に食べる千キャベツももはやフライと同様白飯を進める加速要因だ

    この組み合わせを広めた人は国から何か表彰を受けてもいいとすら感じる。

    いくらか食べたところで漬物の小皿にも箸を伸ばす。

    当たり外れが多いと言われるタクアン。はたしてどうだ?

    ポリポリと音を立てるそれは変に酸っぱくなく、若干の甘味がある。

    が、どこか物足りない。

    可もなく不可もなく、ってところか。

    もう片方の漬物はどうだろう。

    食べてみるもこちらも無難な感じ。

    まあでも、定食の漬物ってこんな感じの印象かもしれない。

    だが、これがないならないでまたどこか物足りなさがあるんだよな。

    3.シンプルイズベストなきんぴら

    1匹目のアジフライと千キャベツが片付いたころにきんぴらが届いた。

    きんぴら

    1本1本が意外と太い。

    普通のきんぴらの倍くらいはあるんじゃないか、これ。

    目の前の思いもしなかった姿をした小鉢に関心を寄せていた時、女将がテレビのリモコンでチャンネルを変えた。

    始まったのは競馬の中継だ。

    なんでわざわざ競馬? そう思ったが、とりあえずその疑問は忘れて目の前のきんぴらを一つまみ。

    太く切られたゴボウは程よい硬さがある。

    しまった。この食感、漬物で味わったな。

    しかし若干しょっぱさもある甘辛いきんぴらは「被った」という印象を与えない。

    これはこれでいい米のおかずだ。

    きんぴらはシンプルな味付けに限る。

     

    食べている間、店に置かれているテレビからレースの実況が流れてくる。

    ふと目をそちらに向けるも、競馬については全く知識がないから何がどうなっているのかは全くわからない。

    実況が熱を帯びていく様子から、もうそろそろゴールかというくらいの情報しか判断できない。

     

    途中参戦したきんぴら、そして2匹目のアジフライを片付けたところで俺は席を立って会計を済ませて外に出た。

    店を出てももやもやとしたものがまだ脳裏に残っている。

    なんで競馬に変えたんだろう。確かに他の客はいたけど、特に誰も変えてくれと言っていなかった気がする。

    そう思いながら店を振り返った時、あるものが目に入った。

    JRA看板

    もしかして、あれが原因か?

    目に映ったのはJRA日本中央競馬会のロゴが入ったビルだ。

    なるほど。だとしたら説明がつく。

    あそこで馬券を買った人がレースを見れるようにということで変えたのか。

    定食のメイン料理が単品でも頼めるようになっているのも、勝った際にちょっと奮発して豪華な食事ができるようにするためということなのかもしれない。

    そういう意味では地元に密着した店、ということなのかもな。

    迷宮入りしそうになった謎が解けた安堵感を胸に、俺は帰路について新宿の街を後にした。

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    ・あとがき

    長野屋の歴史は古く1915年に暖簾を掲げた。

    100年以上続いているその味は、多くの人たちにとっては馴染みの味となっている。

    変化の著しい新宿で変わらない懐かしい雰囲気を持ったこの店に一度足を運んでみていただきたい。

     

    【今回紹介した品】

    魚フライ定食 820円

    きんぴら 270円

     

    お店情報

    長野屋

    ・住所

    東京都新宿区新宿3-35-7

    ・電話番号

    03-3352-3927

    ・営業時間

    11:00~22:00

    水曜定休

    (写真と文/鴉山翔一)

     

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