最近暑くなってきたからか、やけに南の島への旅行広告が目に入る。
日本の、特に都市部の暑さは本当にうんざりする。
湿気は気持ち悪いくらい多い。太陽によって熱せられたコンクリートジャングルは昼もさることながら夜も暑い。
その2つが合わさることで、不快指数120パーセントの冗談にならない蒸し暑さを生み出している。
そりゃ南の島にでも逃げたいと思うのも当然だ。
でも、ビンボーサラリーマンの俺にそんな金なんかあるわけない。そして休みもない
ああ、世の中はなんとも無情なり。
せめて気分だけでも、腹の中だけでも南国に行ければなぁ。
そんなことを考えながらアルタ裏辺りを歩いているととある店の看板が目に入った。
「沖縄食堂やんばる」
沖縄かぁ。高校の修学旅行で行ったきりだなぁ。もう10年くらい前になるのか。
ふとひらめいた。
そうだ。ここだ。この店で何か食べていこう。
沖縄だって立派な南国だ。
沖縄料理を食べれば南国気分を味わうことができるかもしれない。
そう思った俺はやんばるの入口に踏み入れた。
スポンサード リンク
1.親しみやすさを感じさせる店内
やんばるの店舗は縦に細長い作りになっていた。
入口付近にはレジと持ち帰り用に販売されている品がいくつか並べられている。
サーターアンダギーにコンビーフ、さんぴん茶、シークワーサーやグァバ、マンゴーといった南国の果物のジュース。そしていか汁やヤギ汁といった聞きなれない品まである。
入口の右手には階段がある。
2階にも客席があるのだろうか。
奥で接客をしていた店員が俺のところに近づいてくる。
一人であることを伝えると奥のほうにある席に案内された。
それにしても、この店の雰囲気は結構好きだ。
気取った感じもなく、かといってさびれた感じもない。
現地の大衆食堂みたいでなじみやすく、とても落ち着いている。
修学旅行の時に入った店もこんな感じの店だった気がする。
あの時は高校生で班行動中だったので色々と制約があったが、今は違う。
思い切りいかせてもらうとしよう。意気揚々と俺はメニューを開いた。
「沖縄食堂」と銘打っているだけあってやはりメニューが豊富だ。
ゴーヤをはじめ様々な食材を使って作られるチャンプルー、小麦粉の麺を使った沖縄そば、そして沖縄のビール「オリオンビール」や沖縄の酒「泡盛」と一緒に食べたら絶対うまいと確信できる一品料理の数々。
何を食うか。多くの人は悩むだろうが、俺の腹は決まっていた。
沖縄そばだ。
当時食って衝撃を受けたものだ。
そばと言っておきながらそば粉は一切使用していない。
そして、うまい。
あまりの衝撃で土産用の沖縄そばを何個も買ったくらいだ。
数ある沖縄そばの中で今の俺にビビッと来たのは「ソーキそば」だ。
通常沖縄そばというと三枚肉の角煮が乗っているのだが、このソーキソバの場合だと骨付き肉の「ソーキ」が使われている。
骨に近い分ソーキは煮込んだ際に骨のうま味が出て、それが肉に染み込む。
つまりソーキのほうがうまいのだ。
とりあえず1品は確定した。さてもう一品くらいほしいところだ。
でもチャンプルー系はソーキそばを食っても食べきれる自信はない。
かといって単品のソーキや豚の手「テビチ」を注文するのもしっくりこない。
じゃあどうするかと一通り考えた結果、あるものに目が留まった。
「海ブドウ」だ。
沖縄へ旅行に行った家族がお土産に買ってきた際に初めて食べたのだが、なかなかうまかった。
そうだ。これにしよう。
俺は早速近くにいた店員に声を掛けて選び出した2品を注文した。
2.一風変わった沖縄の味
ほどなくして料理が届いた。
さて、まずはソーキソバのほうから食べてみるとしよう。
ソーキそばに乗せられている肉はいわゆる「スペアリブ」と呼ばれる骨付き肉と軟骨が付いている「軟骨ソーキ」の2種類だ。
2種類あるというのはとてもうれしい。
まずは普通のソーキから食べてみるとしよう。
軽く噛むと簡単に肉が骨から離れる。長い時間煮込まれたことによって身がとても柔らかくなっている。だが肉を食っているとしっかりと感じられる。
そして味もまたいい。
骨から出た出汁や旨味が染み込んでいるのだろう。
続いて軟骨ソーキのほうに箸を伸ばす。
一口噛むと先ほどと同じように柔らかい肉の食感、そして軟骨独特のコリコリとした食感を一度に味わうことができる。
軟骨ソーキというと軟骨が煮凝りのようなプルプルになるまで柔らかくなっているものと想像していたが、ここの店ではやや硬めに仕上げているのようだ。
だがそれがまたいい。
噛むたびに口の中で小気味のいい音が響く。そしてこの硬さもまた癖になる。
汁はちょっと薄めのカツオだしで作られている。それが小麦粉で作られているもちっとした麺とまたあう。
それにしてもこの味、そしてこの食感。「そば」ではなく「うどん」と表記したほうが正しいんじゃないだろうか?
奇しくも10年前も抱いていたであろう気持ちがこみ上げてくる。
ソーキソバをとりあえずおいて、そろそろ海ブドウのほうへうつろう。
「ブドウ」と名乗っていながら海ブドウは果物ではない。海藻だ。
南西諸島に生息する海ブドウは「グリーンキャビア」とも呼ばれていて、プチプチとした食感がまた癖になるのだ。
ここの店ではポン酢と一緒に出しているらしい。
俺は早速一つまみ箸で取って、ポン酢に浸す。
海ブドウはドレッシングなどをかけてしまうと徐々にしぼんでしまう性質がある。
そうならないようにするために個人的には一口ずつポン酢に浸すというやり方で食べている。
口の中に入れると魚卵に似たプチプチ感が口の中で遊んでいる。
弾けたときに塩気と磯の風味がほのかに広がる。
そしてその味がまたポン酢とよく合う。
酒飲みにとってはたまらない味であろう。きっと泡盛なんかは最高の相方となるはずだ。
でも俺のような下戸でも十分楽しむことができる。
ソーキソバのような力のある料理に縁の下の海ブドウ。
これはいいコンビを見つけたかもしれない。
3.シメに持ってきたいブルーシールアイス
ソーキそば、そして海ブドウを食べたが、どうも何かが足りない。
しばらく考えたところで俺はようやく答えを見出した。
そうだ。南国感だ。
先ほどの2品は十分うまかったが、南国独特のさわやかな感じはなかった。
このままでは沖縄に行ったはいいものの、国際通りを少しばかりうろついて帰ってくるという味気ない旅をしてしまうような終わり方になってしまう。
南国の雰囲気を味わえるもの、何かないのか?
再びメニューに目をやってもフルーツの盛り合わせのような感じのものはない。
やはり南国を感じることができないのか。そう思った時、とある商品が目に入った。
ブルーシールアイスだ。
アメリカで誕生し、沖縄で躍進的な成長を遂げたブルーシールのアイスはやんばるでも扱われている。
味を見てみると全部で5種類ある。
バニラ、サトウキビ、紅いも、ウベ、そしてマンゴタンゴだ。
バニラとサトウキビ、紅いもは想像できる。問題はウベ、そしてマンゴタンゴだ。
ウベとはいったいどんな食べ物なんだ? そしてマンゴタンゴの「マンゴ」はマンゴーのことだろうが、「タンゴ」とはいったい何のか?
さすがに分かりかねたので近くにいた店員に訊いてみた。
ウベは紅やまいもというものことで、マンゴタンゴはマンゴーとバニラが合わさったものということだ。
その説明を聞いて俺の中で確信が生まれた。
マンゴタンゴ。これしかない。
なぜかと聞かれるとうまく答えられないが、これでなくてはいけないという思いがあった。
注文したマンゴタンゴのアイスはすぐに出てきた。
早速一口掬って口の中に入れると、すぐにアイスが溶けていく。
口の中で広がるマンゴーとバニラの風味を感じ取った瞬間、ふと脳裏に夕日の沈む沖縄の海が浮かぶ。
そうだ、この感じ。この感覚を求めていた。
一口食べただけでマンゴタンゴが俺の欲していた味であると確信した。
このアイスはマンゴーだけであったらかなり甘い、下手をしたら甘ったるいだけのアイスになっていたかもしれない。
そこにバニラが合わさったことでマンゴーが持つ南国の雰囲気を殺さずに甘味を抑えることができている。
その甘さは初めて沖縄に来た少年が太陽のような少女と出会う恋物語にも似ている、なんて普段の自分らしからぬことを考えてしまう。
とにかくこのアイスはそれくらいのインパクトを与えた。
これはいい味に出会えた。
アイスを食べ終え、探していた味で腹を満たした俺は南国の余韻を楽しみながら店を後にした。
スポンサード リンク
・まとめ
今回は沖縄料理を専門に扱う食堂「沖縄食堂やんばる」を紹介したがいかがだっただろうか?
紹介した料理以外にもやんばるでは多くの魅力ある沖縄料理がある。また、泡盛やオリオンビールといった沖縄ならではのアルコールもある。
本土とはどこか一風変わった雰囲気のある沖縄料理をぜひこの店で味わってみてほしい。
【今回紹介した品】
ソーキそば 880円
海ブドウ 450円
ブルーシールアイス 280円
お店情報
沖縄食堂やんばる2号店
・住所
東京都新宿区新宿3-22-1
・電話番号
03-3353-2028
・営業時間
11:00~24:00
(写真と文/鴉山翔一)
コメント