ホルモンからA5ランクまで味わえる「治郎丸」で肉の世界を知る

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サラリーマンとして働いている俺には年2回楽しみな月がある。

6月と12月だ。

この時期にはあるものが俺の手元に来る。

社会人になれば、誰もが期待するであろう品。

そうボーナスだ。

半年間の苦労に対して労いや感謝、発破をかける意味も兼ね備えているボーナス。

このご時世であるが、一応俺の勤める会社でもいくらか出た。

ボーナスを使ってこの半年のご褒美として何かいいものを食べに行きたい。そこで真っ先に思いついたものがある。

焼肉だ。

ボーナスを使って1人で焼肉を食いに行く。なんとも贅沢な響きだろう。

だが一人で焼肉というのは知ってのとおりハードルが高い。

チキンな性格の俺にとってはなおさらだ。

だが、そんな願望をかなえる店を新宿をさまよっているときに見つけることができた。

その店こそ「治郎丸」だった。

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1.高級感漂う店内

治郎丸に着いた俺はそっと店内を覗いてみると、奥までびっしりと人で埋まっている。

休日とはいえど時刻は午後2時過ぎ。ある程度空いていると思っていたのだが、これは予想外だ。

店員に1人で来たことを告げると、店の前のところで少し待っていてほしいとのことだった。

おおよそ10分ぐらい待っていると先客の女性が外に出てきて会計を済ませる。

何を食べたのかはわからないが、おおよそ2000円ちょっとのようだ。

片づけが終わり、ようやく俺は店の中へと案内された。

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席は全てカウンターで椅子はない。いわゆる立ち食いのスタイルだ。

カウンターにはメニューと小さなガスコンロ。カウンターの上にガラスのショーケースのようなものが並んでいるのを見てまるですし屋のようだと錯覚する。

それにしても1人焼肉はうってつけと聞いていたが、まさか立ち食いだったとは。

一応断っておくが、席がないことに文句を言う気はない。むしろいい意味で裏切られたと思っている。

手荷物を下に置くと、店員はドリンクの注文を聞きにきた。

治郎丸では多種多様なアルコールがそろえられている。もちろんソフトドリンクだってちゃんとある。

俺はウーロン茶を頼むと、ライスはどうするか聞かれた。

焼肉を食うにあたって白い飯がないなど考えられるはずがない。

迷わずライスを注文する。

注文が終わったところで初めて来たことを告げると店員はたれについて説明を始めた。

治郎丸では焼き上げた後の味付けに様々な調味料が用意されている。

濃い口のたれ。薄口のたれ。沖縄産の塩。醤油。そしてポン酢。

5種類もあるのか。すごいな。

そう感心している俺に店員は黒い布を渡してきた。

脂除けのエプロンだ。

このエプロンを受け取った時、ちょっとした感動を覚えた。

遠い昔、地元の焼き肉屋に家族で行った時にはエプロンなんて配っていなかった。ファミリー層向けの某食べ放題でもそうだった。

ちゃんとした焼き肉屋だとこういった気配りがあったりするのか。これはいいことを知れたぞ。

治郎丸を気に入り始めた俺は最初の品を決めるために目の前にある肉の札を見始めた。

2.100円以下で2個食べられるホルモン

ずらりと並ぶ肉の札を見て、俺は何を食うか決めかねていた。

肉の値段は幅が広く、俺がいる入口の近くには30円の物が並び、そこから50円、80円ときて100円台のもの、200円台のもの、そして奥のほうには300円の肉の札が下げられている。

だが、最低限の知識しか持っていない俺にはどれがどの部位なのかさっぱりだ。

あれは全部日本語か? と正直疑ってしまう。

それを見ていると近くにいた若い店員が値段による違いを説明してくれた。

80円までの品は俗に「ホルモン」と呼ばれるもので、一皿につき2切れのっているということだ。ちなみに100円を超える品は1皿に1枚らしい。

もし迷っているのであれば最初にホルモンを何品か注文してみるといいかもしれないと勧めてくれた。

なるほど、100円以下だと2個食べられるのか。それはなんかお得な気がするぞ。

そして奥のほうに見える一切れ300円の肉。あれは今の俺にしてみればこの席からあの札のある場所の何十倍ほど遠い世界にある肉なのだろう。

 

結局どれがどういった肉なのかわからずじまいである。

こうなったら完全に勘で選ぶロシアンルーレット、もといホルモンルーレットだ。

近くにいた店員に声を掛け、最初の一皿を注文した。

注文したのは、テッポウ、ノドブエ、ボタン、豚トロ、タン下の五種類。豚トロだけは食べたことはあるが他は未知数だ。IMG_1742

右下から反時計回りにタン下、豚トロ、テッポウ、ボタン、ノドブエだ。

この1皿でも400円していない。

早速この5品をそれぞれ一切れずつ網の上に乗せていく。

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網に乗せると豚トロの脂が下に落ちて一瞬火力が上がる。

これぞ網でやるときの醍醐味だろう。ホットプレートじゃこうはいかない。

ある程度焼けたころにライスが届いた。これで戦闘準備は整った。

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まずタン下からいってみよう。

「タン」とつくのだから恐らく舌に関係する何かだろう。濃い口のたれに浸けて口に放り込む。

むむっ、なかなか硬い。だが全然悪くない。

むしろこの硬さがかなり癖になりそうだ。

続いていくはテッポウ。

見た感じ腸のようだが果たしてどうだ?

嚙んでみると思いのほか軟らかい。

腸系の肉というのはコリコリしているもんだと思っていただけにこれはちょっと予想外。

1皿目の折り返しに選んだのは豚トロ。

網で焼いたことで脂がちょうどいい感じに落ちてくれているのでしつこさを感じない。

4つ目はボタン。少なくともイノシシのことではないだろう。

いざ実食。

うん? う~ん?

何だろう。感想が出てこない。

特に歯ごたえも、味もそこまで特徴がない。

別のタイミングでならちゃんとした感想が出たろうに。ちょっと残念。

気を取り直して、最後のノドブエをいってみよう。

のど元の辺りにあるからなのか、ものすごくコリコリする。軟骨みたいだ。

しかし、ここまでのコリコリとはまた違う。

アリだ。

2切れ目は米と一緒においしくいただいた。

1皿目は4品が俺の舌を射抜いた。

2皿目にいってみるとしよう。

選んだのは左から時計回りにマルチョウ、コメカミ、ミノだ。

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それぞれの肉を網の上に乗せると一気に火が強くなった。

マルチョウからあふれた脂が火に注がれたのだ。

マルチョウはどうやら脂肪が関連するようだ。どんな味になるのだろう。

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では気になるマルチョウから手を付ける。

ひとたび口に入れると肉がトロッと溶けていった。

脂肪分が多いからなのだろう。クリーミーだ。

続いてミノ。

こちらはマルチョウと違ってコリコリ系だ。色も相まってイカのようにも感じる。

最後にコメカミ。

これまでの2つと違って赤身だ。そして食感はコリコリ。

うーむ。コリコリ続きになってしまった。そのせいかインパクトに欠ける。

確かめるために2切れ目は最初に食べたが、やはり印象が薄い。

食べる順番が違っていればまた変わったかもしれないな。

2皿目は3品中2品。

1皿目との合計で8発中6発。数あるホルモンの弾丸の中からこれだけ当たりを引けたのはかなり運がいい気がする。

あれ? ロシアンルーレットって弾が当たり? それともはずれ? どっちだ?

まあいいや。

このほかにもまだまだホルモンはある。

だがそれらを差し置いて、俺はその先にあるものへと目を向けていた。

3.どちらがうまいか決められないバラ板とバラ山

俺は少し離れたところにあるちょっとお高い肉の札を眺めていた。

100円台の肉は全部で4種類ある。

タン先、タン元、バラ板、そしてバラ山だ。

タン先とタン山については隣の客が注文する際に店員に訊いていたのを小耳に挟んだからどんな感しかはわかる。

問題はバラ板とバラ山だ。

バラとはバラ肉のことなのだろうが、問題は「板」と「山」の違い。

これによって何が変わるのか?

全くわからん。

近くにいた店員に訊くと、わかりやすく答えてくれた。

バラ板とバラ山は予想通りバラ肉で一般的に「カルビ」と呼ばれているもので、バラ板が通常のカルビ、バラ山はいわゆる中落ちカルビだということだ。

バラ板のほうが肉の甘味が強く、バラ山のほうが脂ののりがいいらしい。

なるほど。これは困ったことになったぞ。

どっちも俺の好みだ。

片方を選んでたっぷり楽しもうと思っていたが、これは選べん。

選べないときはどうするか?

簡単だ。どっちも頼んでしまえばいい。

そう思った俺はバラ板とバラ山をそれぞれ1枚ずつ注文した。

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見ての通り、右にある平たいのがバラ山、左にあるブロック状のがバラ山だ。

それぞれ程よい具合に焼いて口へと運ぶ。

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まずバラ板。

やや硬めのしっかりとした食感があるが、噛むとそこから肉汁が決壊したかのようにあふれてくる。

これは米が進む。

うまい。これはうまいぞ。

続いてバラ山。

こちらはバラ板と比べると肉質は柔らかい。そして表面はすでに旨味がたっぷりだ。

その旨味は反射的に米を口へと運ばせていく。

こちらも負けずにうまいぞ。

 

それぞれ食べ終えてから俺は一度箸をおいた。

なんてことだ。どっちもうまい。

もし最後の晩餐でどちらか選べと言われてもこれは選べるはずがない。

選べというやつがいたとしたらそいつはきっと仏の顔をした鬼だ。

いや、待てよ。

別にここで選ぶ必要はないんじゃないだろうか。

この2枚はランクでいうとA5だ。

そしてこの上も存在する。

そう。A5だ。

4.もはや異次元とも思えるA5ランク肉

先ほどの2枚でも十分満足できる味だった。だが、もうひとつ上の世界を見てみたいという欲が俺の中で湧き始めていた。

A5ランクの肉はどれを見ても高そうな名前をしている。

だが、一個だけ俺の目に留まったものがあった。

「ササミ」だ。

ササミと聞いて思いつくものといえば、鶏肉の「ササミ」だ。

だがここに書いてあるササミは鶏肉のそれでないことは明白だろう。

であればこれはいったいどこのことなのか? こればっかりはさすがにわからない。

再び俺は店員に声をかけ、「ササミ」の部位について訊いた。

ササミとはバラ肉の一種で肉質は柔らかくキメが細かいらしい。

そして先ほど食べたバラ板やバラ山の上に君臨する肉だということだ。

それを聞くとがぜん食べたくなってくる。

懐事情よりも先に未知への好奇心が動き、早速そのササミを注文した。

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届いた肉は光沢のある紅玉のような赤身の一枚。今までのとは明らかにオーラが違う。

そしてその赤の中に浮かぶ白い模様。これはもしかしてお高い肉になれば必ずと言っていいほど入っている「サシ」ではなかろうか?

それに気づいた瞬間、この肉がとてつもない存在感を放っているように見えた。

これがA5ランク。最上位に存在する肉なのか。

震える手で持ち上げて網の上に乗せる。

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ここから先は絶対に失敗はできない。焦がしたなんて持ってのほかだ。

慎重に頃合いを見てひっくり返す。

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はいもう絶対うまいじゃん。

味わう前に確信した。絶対うまい。

裏面に焼き目をつける程度にした俺はたれをつけるべく貴重な一枚を持ち上げたところで手を止めた。

待てよ。もしかしたら何もつけなくてもうまいんじゃないだろうか。

ここまで良い肉を今まで食べたことはない。

試しに一齧りしてその味を確かめる。

噛んだ刹那、底から肉汁があふれてくる。そして舌が味をとらえた。

甘い。

肉が甘い。肉汁の中に甘味を感じることができる。

こんな経験は初めてだ。これが高級な肉が持つ味なのか。

残りにほんのちょっとだけたれをつけてみると、たれの味に負けないくらい肉が主張している。

こんな肉が世の中にあったなんて。

たった一切れでありながら肉の広さを知った気がする。

 

もっとこの肉を食いたい。他のA5ランクの肉も食ってみたいという欲が沸き起こってくるが、同時にとあるものが顔を出してきた。

そう。チキンな俺の性格だ。

ここまでにいくらかかったのか。それが気になって仕方がない。

そんな杞憂は全部焼いて食ってしまいたいところだが、どうもそれができない。

かといって店員にここまで食べたのでいくらかかったかなんて聞くこともできない。

仕方ない。今日のところは、ここで引き下がるとしよう。

店員に声をかけ、会計へとうつる。

そこで提示された金額は俺が予想していた金額よりもだいぶ安かった。というか2000円にすら届いていない。

なんだよ。それならもうちょっとくらい肉食えたじゃん。

だがまあ今回これでどのくらいになるのかわかったのだから、よしとするか。

若干まだ物足りない腹で俺は新宿駅のほうへと向かっていった。

さて、残りはどうやって使おうか。

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・あとがき

治郎丸は1枚から気になる肉を食べることができる。

だからこそ通常の屋では焼き肉屋ではできないちょっと気になる肉や皿で注文すると値段の張る肉などを気軽に頼むことが可能だ。

アルコールも扱っているので、美味しい肉と一緒に酒を飲むというちょっと贅沢な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

【今回紹介した品(100円以上)】

バラ板 180円

バラ山 180円

ササミ 300円

ウーロン茶 250円

ライス 280円

 

治郎丸

・住所

東京都新宿区歌舞伎町1-26-3

・電話番号

03-6380-3292

・営業時間

11:00~翌5:00

(写真と文/鴉山翔一)

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